会誌-「サークル水月会誌 第5回」

■ リアクション5−7  (独立暦401年水の月)


「ただいま。」
 アヴィーナから帰ってきたサティスはにこにこしながら越後屋本店の敷居をまたいだ。本店とはいえさほど広くない店内に、大きな青銅製の壷やら、丹念に鎚目のある銅の茶筒やら、山積みにされている堅苦しい書籍やら、出所が怪しそうな弦楽器やら、ハッカのにおいのする膏薬やら、はたまた人参だとか大根だとかに至るまでいろいろ置いてある。 ……手広く商売をやっている証拠だが、いかにもバラバラ。新興の中堅商人はこんなものなのだろうけど。
「おかえりなさいませ。」
「うん、ただいま。どう、調子は。うまくいってる?」
 サティスが店員たちとからからと小話をはじめる。話好きの彼は、やれ蜘蛛会の荘厳の建築は必見だとか、やれ宿屋でだされた青魚のムニエル・アヴィーナ風の味は絶品だったとか、店員たちに土産話を披露する。……話術も巧みだしおもしろいのだが、ことある毎に話を聞かされる店員のみなさんにしてみれば、相手が番頭だけに文句も言いづらい。つかわれる身のつらさ、というやつである。彼の話好きはご近所の奥様方には有名で、ちまたでは「よくあれで番頭がつとまるものだ」とささやく人がいるが、商売では広い知識とある程度の社交性が欠かせないから、視点を変えれば必要とされる才能だろう。
 ひととおり土産話も終わり満足して店の奥に入っていくと、レジにいた青年に声をかけられる。サティスより少し年上のこの青年は、名はショウヨウといい、番頭代理である。店主フリードに直接仕込まれた彼は、越後屋でも一番の腕利きで才覚はサティスも及ばないほどである。
「あ、お帰りなさい。案外、お帰りがはやかったんですね。」
「うん、なんか恐いくらいに話がトントン拍子ですすんでしまって。いまひとつ信じられないんだ。」
「……え? ということは例の件は首尾よくいったんですか。」
「そういうこと。これから毎日忙しくなるよ〜。いろいろ組織の準備をしなきゃだしな。っと。ところで、親父どのは?」
「フリードさまは、出かけておられます。なんでも西方に新邑建設の動きがあり、そこに店舗を出すことを考えておられるようで、旅行がてらに視察に向かわれたようです。」
 置き手紙をサティスに示しながら「せめてひとこと言ってからでかけて欲しかった」と呟くショウヨウ。
「なになに、『西にバカンスに行って来るから、探さないでね』……相変わらずだな、親父どの。」
「……いい人なんですけどねえ。」
「……そうだねえ。」
 二人でため息をつく。サティスのため息をつく癖は、たぶんフリードが原因だろう。それはともかく、サティスはどういう経過であらたな商人組織の結成が許可されたかショウヨウに説明する。
「それで、どうするんですか。サティスさん。」
「とりあえず名前を考えないとな。なにがいいかな。」
「レダ商工会じゃないんですか?」
「却下された。」
「じゃあ、レダ商人連合なんてどうでしょ?」
「……そのラインは却下されつづけるだろうな。うーん、どうしたものか。人を集める上で名称は結構重要なのだが。」
「話題性を重視するなら、世の中が気にかけていることを絡めるのがいいでしょうね。例えば、予言者の言葉とか。」
「予言者? あの、グーラとか言う人?」
「ドーラじゃなかったですっけ。ま、その予言者さまの言葉を借りればいいんじゃないですか。ええと、東に星がなんたらり、とかいうのがあったでしょう。」
「あったねえ、そういうの。む。ひらめいた。『東の星』なんてのはどう?」
「……それはひらめいたとは言わないのでは?」
 寒い風が越後屋本店の中を駆け抜けていった。

「『星屑会』ってのがいいんじゃないか?」
 とサティスは主張したが、よく考えると妖人(エルフ)の『星薬会』と一文字かぶっていてインパクトに欠ける。結局『東精会』で発足することになったレダ商工会(仮)は派手な宣伝活動もあって予想以上に多くの商人・商家が集まった。サティスはその中で有力商人をピックアップし幹部に誘った。すなわち事務局(これは越後屋サティス)・渉外部(外部との交渉)・企画部(組織活動の企画)・経理部(財政管理)・情報部(情報収集)・監査部(不正追及)などの重要ポストを大口加盟者に開放したのだ。事務局は組織上大きな役割を果たすため、名目上他の部署よりも一段高い立場だが、実質的にはポストを越後屋系列で独占せず分散したので、支配・被支配というよりは議を通じて行動する商人共同体の形態になった。
 サティスはてんてこまいだった。月の半ばも過ぎて、やっと組織のおおざっぱな枠組みができ、実際の運営に向けて動き始めるところまでこぎ着けた。今にしてみても忙しいのはかわらないが、やっと一息つける状況になり越後屋本店でショウヨウとだべっている。話好きの本領発揮であるが、実はショウヨウの意見を聞きに来たのだ。
「……というようにしようと思っているんだよ。こういう体制にしておけば、たとえ私が闇討ちに会うようなことになっても、組織自体は運営できるからね。」
 サティスはショウヨウに説明しながら胸を張る。

「そうですね。でも、組織内で対立が起きたときはどうするんですか。大商人に重要ポストをあたえているから、収拾が大変ですよ。」
「大丈夫。名目上のトップ『会頭』にレダ邑宰家を迎える段取りはつけたから。会頭といっても普段は議事進行役だからあまり発言できないけど、そういうときには権威を以てもめ事に対処するわけだ。」
「なるほど。レダ邑宰家ももともとは大商人ですからね。……とりあえずは、いいんじゃないですか。それにしても、しばらくはサティスさんがリーダーシップをとるのがいいですよ。組織がしっかり固まるまでは。」
「わかってるって。」
    [サティス=アイセン怒涛の巻(長谷川雨楽氏のリアクション)]よりほぼ引用

 越後屋店主フリード=アイセンは、ジュシーの街を歩いていた。トゥー族の居地の中ほどに位置する、湖のほとりの邑。この北方約三日のところに、「芸術の邑」バルスの建邑予定地がある。その準備をするにあたって、「邑宰」ヴィーシア達はここジュシーに拠点をおいていた。そこかしこに高札が立ち、バルスの宣伝や連絡先を知らせている。広場などでは必ず演説や演奏をしている者がいて、多くの人が周囲をとりまいている。道は人であふれていた。
「驚いたな、これは」
 アヴィーナよりも活気があるのではないかと思うほどだ。むろんバルスに住もうと思って来た気の早い連中が大半なのだろうが。
「おや……?」
 見覚えのある男を往来に見つけて、フリードは首をかしげた。黒髪黒目、ナルスだ。記憶をたぐる。思い出した。アヴィーナの商店で見た男だ。確か『フェルノ店』の店主であった筈だが。そのとなりには背の高い銀髪の男と銀狼がいる。
「財政長官」
 と、若者は呼びかけた。フリードははっとした。……財政長官?
「昨日到着した食糧のほう、うまく分配できたみたいですよ。ありがとうございます。これで、難民の喧嘩も、少しは減るでしょう」
「礼を言われるようなことではありませんよ、外吏長。私は自分のやるべき事をするだけです。……それに、これは、あなた方のためではない」
「え?」
「むしろ私たちフェルノ店のためでもあるのです。我々がアヴィーナを捨て、こちらへと移ってきたのは、その方が我々の利益になると思ったからです。利益や打算抜きで動く商人などいません。ですから、私へのお気遣いは無用です」
「そうですか」
 青年は笑い、そして二人は連れだって一軒の店の中に入っていった。フリードは立ち止まり、看板を見上げた。食堂『銀のたてごと亭』──バルス建邑計画の中枢。
「フェルノ店店主、フェルノ・クーレーン。サティスの計画が順調と知って、レダとアヴィーナを捨て、バルスにすべてを賭けるつもりか……」
 フリードは独語した。
「しかし、彼にはスィスニアに武器を流したという噂もあるな……」
 そんな男が、平和主義を標榜しているバルスの財政長官になって、はたしてうまくいくのだろうか。何より、武器を流したという噂が公になったりしたら……

 水の月である。春である。……眠い。
 いつまでもあっちへふらふら、こっちへふらふらと流れる生活をしていると、何をしていいのだかわからなくなってくる。やっぱり人生には目標がなくては、生活に張りが出ない。ちょっと落ちつきたい。かといって、結婚なんてしたくない。
 というわけで、カルナ・シェルセラヴさん(20)は唐突に決心した。
「シエルブランドでも作ろーかしら?」
 この御時世に……と思わなくもないが、こういう時だからこそ!である。私の美的感覚を生かして、服とか、小物とか、アクセサリとか……。そうよ、シャリヤーティの神官としての能力を生かしてタリスマンにすればいいじゃない。
 もちろん、裏のお仕事もOK……。
「お兄様、援助してくれますわよね?」
 ちょっとしゃくにさわるけど、こういう時に利用してこその兄である。せいぜいサービスしてあげなきゃ……。
 極上の一歩手前ぐらいの笑みをみせてあげると、兄様、大喜びでユディトに店を出させてくれた。
 ……ちょろいもんだわ。

(アプサラスよ……清き者、すべての(けが)れを癒す者よ)
(我がアプサラス「タムリン」──我が身に宿りて、我を癒せ……)
 メールリンクス・メールディングは、一身に祈り続けた。
 彼はディリーパの神官見習いにして使鬼である。ただし、使える精霊はまだ一体しかいない。霊力は強いほうであるから、もっと使えてもよい筈なのだが、どうもうまくいかなかった。
 ディリーパの神官にはなりたくてなったわけではない。両親がディリーパの神官なので、仕方なく……である。その割には、もう30にもなろうというのに自分の伴侶は見つけだせずにいる。
 いや、かつては心に留めた異性がいた。恋や愛と呼べるほど深いものではなかったが。ユー、という娘だった。彼と同じトゥー族の少女で、彼と同じ使鬼だった。修行を終え、故郷へと帰った数日後、彼女の故郷を津波が襲った。
 失ったものが大きかったことを、彼はまだはっきりと自覚してはいない。嫌だと思いながらディリーパに仕えているのも、両親の呪縛のせいだと信じていた。だから、それを断ち切るため、彼はアプサラスを召喚し、自分の身に同化させた。
 そしてセルファニア湖にとびこみ、すでに一週間が経つ。そろそろ、精神力も限界に近づいている。余計なことを考える力はない。アプサラスを去らせ、水から上がると、彼は背を木にもたせ、用意しておいた小さな召喚円を完成させた。円上に水、紫の布、火、羽、箱、木の葉をならべ、中心に剣を突き立てる。略式で、象の力も弱いが、今の自分にはこれで十分の筈だ。七つの種類の「気」を感じながら、彼は天の神語でつぶやいた。
「万物に宿る気よ、神に従い天則を示す者よ。今こそ形成し、その姿を示せ……!」
 眼を見開き、七つの象を見つめる。何も起こらない。これは失敗したか……いや、あきらめるわけにはいかない!
「鬼よ……!」
 残った霊力の全てを注ぎ込む。炎がちらと揺れ、剣に影を映した。……一瞬、ほんの一瞬だけ、白い女の姿が見えた。
「ヴァルキュリアか……!」
 ヴァルキュリア。勇気を司る精霊。白き女騎士。アシュラの従神。その戦闘力は、二十五精霊中で最大……
「アシュラの神語を学ばなければな」
 喜びと、ほっとしたのとで気が抜けた。かろうじて毛布をひっかぶると、そのまま眠りに落ちていた。

 一人のナルスがそこを通りがかった。もうすっかり日は落ちていて、どこで寝ようかと思案していたところだ。いざとなれば往来だろうが野原だろうが、どこででも寝られる彼女であったが、できうるならば屋根があって下が柔らかい方が望ましい。
「なんか、マグロが落ちてるな」
 足を止める。30になるかならないかという男だ。寝息で草が揺れているところを見ると、どうやら死んではいないらしい。
「どうするべきなのかなあ、これは」
 考え込む。こんな所で寝てたら風邪をひきますよ、とでも言うべきなんだろうか。ま、生きてるんだから放っとけばいいという考え方もある。
「オレの知ったこっちゃない」
 と結論を出しかけて、男の身体の下の地面に何やら描いてあるのに気付いた。
「おお、これは召喚円ではないか! ちょうどいい、これで占いでもやろう。私の宝の在処が分かるかも……」
 棒きれを探し、円の中心にたてようとして、男の腹が邪魔をしているのに気づく。
「やっぱり、これは起こせってことか……仕方ないなあ」
 棒の先で男の頬をつつく。
「おい、おっさん。起きろよ。風邪ひくぜ」
「ん……何……」
 ごろりと身体を反転させる。円から完全に外れた。
「よし、チャンス!」
 剣を退け、かるく棒を立てる。
「我が財宝のありかはいずこか。示せ棒!」
 手を放す。ぱたり、と倒れた棒は、人の方角をさした。
「よーし、あっちか……って、あっちは湖じゃないか! 湖の中に財宝があるわけ……むっ、思い出したぞ。湖底遺跡か!」
 ぱし、と手を打ち合わす。
「おお、湖底遺跡が私を呼んでいる! いざ行かん、財宝を求めて!」
「何を一人で盛り上がっているんです?」
 冷静なツッコミに振り返ると、男が上体を起こしてじいっとこっちを見ていた。
「あ、起きてたのか……」
「起きないわけがないでしょう、あんなにうるさくされちゃあ……ってあなた、誰ですか? 人がせっかく修行明けで寝てるところに……」
「オレか。オレは黒のフミール」
「はあ?」
「いや本名の方がいいのかなあ。黒のフミールの方が通りがいいからなあ……」
「で、何でこんな所に?」
「よくぞ聞いてくれました」
 フミールはどっかと腰をおろしてあぐらをかいた。
「神器をさがしているのさっ」
「神器?」
「神の啓示を受けたんだ。玉、鏡、剣の3つの神器をさがせってさ」
「はあ……」
 それはただ、寝ぼけていて彼女の母が「玉子やきできたよ」と言ったのを聞きまちがえたのにすぎないのだが、思いこんでしまった彼女を止める者は誰もいなかったのである。
「ちょっとこの召喚円借りたからね。どうやら神器は湖底遺跡にあるらしいんだ。どうだ、一緒に行くか?」
 メールディングは頭が痛くなった。どうして世にはこういう無茶な女が多いのだろう。

 キシン・スルタンは小雨の降る中、アヴィーナに帰っていた。詰め所に入り、蜘蛛会の中で起こった様々な動きを同僚に伺う。聞き終わった時、彼の顔には苦笑が浮かんでいた。
 ……どうやら、俺達の仕事が睨まれているらしいな。だが、蜘蛛会の陰糸である間諜は、残念ながら消えはしないだろう。もしくは、経済と、情報で完璧に二分割されるか。蜘蛛会の中核に舞踏と盗賊神ナタが鎮座する限りは。
 帰路の途中気に罹ったのは、派手に商売を行っているライル社だった。ライル社。あの中核にいるのも娘だが、人間の光の部分を集めたような少女らしい。男受けは良いということか。邑も中心人物も闇を無視した存在だ。
 彼の中に生まれた感情は、やがて妙な策の形を結んでいた。
 まず、丞を商局長の元に送り、ライル社の商品の委託と、商業の提携を申し出る。間諜員はライル社の深部へ侵入し、経済のシステムを調べ上げる。砂時計が刻むように、微かに蜘蛛会の方向へと向けて行く。末にスウィズの中のライル社を戴く。長い時間がかかるだろうが価値はある。
 だが、所詮一間諜員の申し出だ。ナタ・エイラ司祭が受け入れてくれるだろうか。何であれ、スルタンは蜘蛛会への帰属意識と愛着があった。より糸がしなやかさを増し、島の全体を覆うことを望んでいる。
 そんな彼は「変わらないこと」を命題に置かれた故郷に小さな動揺が起こっていることを知らなかった。
 腰を上げ、グラスの液体を喉に流し込む。
「嬢さんに遭いに行くか。」
 スルタンは霧雨の浮かぶ中、間諜員専用の通路を渡って行った。
                       [高砂其角さんのキャラシートより]

「ライル社との商業の提携、ね……」
 エイラが簡単に会ってくれたのは、たぶん彼の異相のおかげだろう。エイラの珍しいもの好きは広く知られている。
「面白いことは面白いわ。いずれ、日常生活にも施術宝器は不可欠になっていくかも知れない……でも、それは今ではないわ。遠い、遠い未来のことよ」
「そうですか……」
 もとより受け入れられるとは思っていなかったので、失望の念はなかった。
「何故か、知りたい?」
 エイラは笑う。スルタンは瞳を伏せた。
「いいえ、別に」
「知りたくなくても教えてあげるわ、──あの子、長くないわよ」
 エイラは囁いた。え、とスルタンは顔を上げる。
「施術宝器の大量生産……たしかに、理論的には不可能じゃないし、技術的に可能だって事はライル社が証明したわね。でも、今までだれもやらなかったのは何故か……地気が、乱れるからよ」
「地気が、乱れる?」
「ええ」
 エイラは立ち上がり、壁の地図を指さした。
「ヴェルーダ。ここで起こった『大いなる災い』のことは、あなたも知っているでしょう? 偽邑宰が自爆したとき、彼はヴェルーダ一帯の火の気を全部使いきってしまった。だから気候は寒くなり、人々の体温が奪われる奇病が発生したわ。地気が乱れるっていうのは、そういうことなの」
「同じことが、スウィズでも起こっている?」
「可能性は高いわね。ましてや、施術宝器に囲まれて育ったライル・ナタケはどうかしら。……いい、人間は神じゃないのよ。施術宝器みたいに力を集めて固めることはできても、力を取り除いたあとを埋めるなんて芸当、できるわけないわ」
「御意」
「あなたに言うことじゃないけど、ね」
 エイラは笑い、振り返った。
「そうそう、ついでだけど一つ、あなたに言うことがあるわ」
「何でしょうか」
「シュエルに行きなさい。黒い女を連れた白い男を見たそうよ」
 スルタンは深く頭を垂れた。
「……御意」

「では、本当なのか」
「ああ、間違いない」
 シュエルの蜘蛛会支部で応対した男は、強く頷いた。
「メール族やツァン族の者なら、茶か褐色と表現するだろう。鴉のように黒い肌の女だったそうだから」
「で、それはいつ、どこで見たと?」
 スルタンは身を乗り出した。男はまあまあ、と手で制しながら書簡の山をかきわけた。
「うーん、どこに行ったか……ああ、これだ。二週間前だな。このシュエルの東、帝国時代の遺跡のあるところだ。それと、これは10日前。その近くの……そう、ルーキ家の別宅の中に入っていくのを目撃されている」
「……間違いない」
 スルタンは呻いた。
「役に立てたかい」
「ああ、十分だ」
 定額の倍の情報料を払うと、スルタンはすぐさま飛び出していった。

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